はじめに〜トナカイと芝犬の出会い。

ここのカクテルバーはカウンター席が7席のみのこじんまりとしたバー。
白熱電球の優しい明かりが店内に広がっている。
木造りのカウンターや棚、床が心地よさと落ち着いた雰囲気を出している。
 
カウンターの内側では、マスターの芝犬が楽しそうにトランプでタワーを作っていた。
 
入り口の横には小さな窓がついており
そこから外の様子がうかがえる。
 
お店の前に人が来れば、昼間は日の光、夜になれば街灯により人影がその窓に映るようになっている。
 
芝犬がトランプタワー10段を完成させたとき、窓に人影が見えた。
 
 
カラカラン。
 
入り口のドアが開き、1人の男性が入ってきた。
 
この日は風が吹いており、入り口を開けた瞬間に店内に風が吹き込みトランプタワーは見事に崩れてしまった。
 
芝犬は何食わぬ顔でトランプを片付けはじめ、この男性に挨拶をした。
 
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
こんばんは。いらっしゃいませ。


 
男性は軽く会釈をして店内を見回したあと、カウンターの端の席に座った。
 
・・・・。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)


 
見た目は20代後半ほど
身長は170cmぐらいの細身で
メガネをかけた男性である。
 
どこか不安で落ち着かない表情をしている。
 
おそらくこの人、こういう場所は初めてだろうなぁ。
ちょっと確認してみようかな
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)


 
芝犬は男性のもとに向かい声をかけた。
 
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
こんばんは。お飲み物は何になさいますか?


 
そう言って【おすすめ】と書かれたカクテルのカードを男性の前に出した。
 
ーーーー
【おすすめ】
カシスオレンジ
ファジーネーブル
スクリュードライバー
オレンジブロッサム
ホワイトレディ
マルガリータ
アレキサンダー
レッドアイ
ーーーー
 
カードを見た男性は、悩んでいた。
 
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
もしよければ、お客さんに合うカクテルを
私が作りますよ。


と、ニッコっと笑ってマスターは言った。
 
男性は少し安心したように
よろしくお願いします。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)


と返事をした。
ここに来て初の発言であった。
 
カシャカシャカシャカシャ。
シェイカーの音が店内に静かな店内に響く。
 
マスターがカクテルを作りながら
男性に質問してみた。
 
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
お客さん、なにか考えてらっしゃるようですが、お悩みでも?


 
いきなり核心をつくような質問に戸惑いつつも、男性は質問に答えた。
 
悩み、、そうですね、上手く表現できないのですが【自分の思うように物事が進まないこと】ですね
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)


シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
【自分の思うように】というのは、スケジュールや計画とかですか?
 
そうですね。それもあります。明日やその先の予定を立てるのですがそれがうまくいかないのです。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)
 
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
なるほど、計画して行動するけど思ったように進まないというのはそういうことですね。
 
はい、、タスクとかも色々やらなければならないとか思いはするんですが、後回しににしてしまって追い込まれることもあったりします。他には自己啓発の本を買って、そこに書かれていることをじっせんはするもののうまくいかず、、三日坊主で終わってしまうことばかりですだから自分は大した人間ではないという考えも出てきて、なんか悪循環な感じですね。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)


シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
それはだいぶ深刻そうですね。
 
そう言って芝犬が少し黙ったあとまた口を開いた。
 
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
もしよければ、お客様のお悩みに付き合わせていただけませんか?
 
芝犬はニコッと笑った。
男性はびっくりしたものの今自分の状態としては相談相手がいるほうがいいと判断し返事をした。
よ、よろしくお願いいたします。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)


 
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
はい!よろしくお願いします。あと、自己紹介が遅れて申し訳ないのですが、私は芝犬と申します。このバーのマスターです。といっても私一人しかいないのですが(笑)
あ、自分はトナカイといいます。今は社会人として飲食業に務めています。よろしくお願いします。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
トナカイさんですね。ちなみに周りからはなんと呼ばれているのですか?
ナカイですね。トナカイだと言いにくいらしく。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
私もそう呼ばせていただきます(笑)。ちなみに私はシバと呼ばれることが多いですね。ナカイさんも気軽に呼んでください。
シバさん。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
はい。
あ。呼んだだけです。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
あ(笑)


(笑)
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)
 
二人の空気が和んだところで、シバがナカイにカクテルを出してきた。
 
シバ(芝犬)
シバ(芝犬)
ではこれがお任せいただいたカクテルです。イメージとしては「真面目で向上心のある男性」です。
 
ありがとうございます。なんか照れますね/// いただきます。
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)
 
そう言ってナカイが一口飲んだ後、さらに会話が続いた。
シバさんって結構人から好かれるタイプですか?
ナカイ(トナカイ)
ナカイ(トナカイ)


シバ「そうですね~。言われてみればそんな気がします。」
ナカイ「きっとそうですよ!僕もすぐに打ち解けられましたし。」
シバ「ありがとうございます(^^」
ナカイ「ちなみにシバさんも僕みたいな悩みはあるのですか?」
シバ「先ほどのような悩みですか?それだったらしょっちゅうありますよ。毎日です。」
ナカイ「そうなってくると嫌になってきませんか?自分はできないんだとか、、」
 
その質問にシバは少し考えた。
 
シバ「確かに嫌になりますね。でも昔ほどではありません。今はむしろ
楽しんでいる自分がいます。」
ナカイ「すごいですね。。僕はいつもマイナスに考えてしまいます。【自分はできないんだ。自分はダメなんだ。】って」
 
それを聞いたシバがナカイをなだめるように口を開いた
シバ「隣の芝は青く見えるものなんですよ。」
 
ナカイは目が点になっていた。
シバは気にせず話をつづけた。
シバ「自分と誰かを比較すると自分が相手よりすこぶる優れていない限りは自分を過小評価してしまうものです。これが癖つくといっつもマイナスに考えて失敗したら自分を責めてしまいます。そして【自分はダメだ】と思い込み始めてしまうわけです。そうなってくるとますますそういう状況になるばかりだと私は思うので、あまり自分と誰かを比較はしないのです。自分の立てた自分の理想像と比較するようにしています。」
 
ナカイ「その【そういう状況になるばかり】というのは【自分はダメだ】と思うようなことばかり起こるということですか?】
 
シバ「そうです。引き寄せの法則というわけではないですが、やはり人が強くイメージしたことはそうなりやすいと思います。ナカイさんはきっと真面目なので失敗とか簡単に許せないのかもしれませんが、そればかり考えていては成功より失敗が続くと思いますよ。失敗を楽しんでいけるようにしましょう。」
 
ナカイ「なるほど、、なんか不思議ですね。でもそんな気がします。自分がマイナスに考えれば状況はマイナスになる。。。だから他人と自分の比較はしないほうがいいわけですか」
 
シバは無言でうなずいた。
 
ナカイ「ちょっと気が楽になりました。家に帰ったら自分の理想像を考えてみることにします。ありがとうございます。」
 
シバ「どういたしまして。どんなことでもいいのでまたぜひ色々と話を聞かせてください」
 
ナカイ「はい!また明日きますね(笑)」
シバ「はい(笑)お待ちしてます。今日のお会計はなしでいいですよ。楽しい時間をありがとうございます。」
 
 
シバがそういうとナカイは少し遠慮した雰囲気で席を立った。
ナカイ「あ。カクテルごちそうさまでした!」
 
カラカラン。
入口の鈴が鳴った。
ナカイがお店を出るまでシバは軽く手を振って見送った。
そしてまたトランプタワーを作り始めた。